鍼灸師「わかりました。肩以外は必要ないので肩だけベッドに置いてそれ以外の部分は持って帰ってください。明日までに仕上げておきます。」
「頭痛なのになぜ頭以外の場所に鍼を刺すんですか?」といったような質問を受けることがよくあります。このことについては、ほかのページで説明してあるのですが、もう少しわかりやすく説明してみます。
ほとんどの患者さんの発想は症状があるところに鍼を刺せば治るんだ」というものですが、その根拠は極めてあいまいです。その根拠を明確に説明できる人はいません。
鍼で身体に極めて微弱な傷をつけることにより体調回復させると言うのは常識的ではなく、これまでの常識ではない理解が必要です。
鍼を患部に刺すべきな理由はあるのでしょうか?
- 鍼を刺されているのに眠ってしまう。
- 膝に鍼を刺すとお腹がグルグル鳴りはじめる。
これは鍼灸では当たり前に起きる現象です。こういったことを「患部に刺せば治る」理論で説明できるでしょうか?無理ではないかと思います。
そうするとこれまでの常識とは違う理解が必要になります。
これまでの常識を一旦置いて以下お読みください。
症状と原因が同じ場所にあることはそんなに多いのでしょうか?
あなたがカー用品の従業員だとします。あなたのもとにお客さんからカーステレオの修理依頼が来ました。内容は、「後部スピーカーのうち右だけ音が出ない」ということだそうです。ほかに情報はありません。
あなたは何をしますか?
- 左右バランス調整できるボタンやつまみが無いか調べ、それがずれていたら、調整する。
- その車に装備されている機器を順に動作させてみて(CD、ラジオ、デジタルプレイヤーなど)音源に問題が無いか調べる。
- スピーカーよりひとつ前の接触部分まで音声信号が届いているか調べ、断線のチェックをする。
そして上記チェックしても故障が無ければ、左右スピーカーを入れ替えてみるなどしてスピーカーの故障を調べるのではないでしょうか? みなさんもそうだと思いますが、私はこれまでたくさんのスピーカー付家電製品を使いました。小さいものはイヤホン、大きなものはステレオコンポですね。音が出ないことはたくさんありましたが、ほとんど全部が配線か装置側の設定や故障でした。スピーカー自体の問題で音が出なくなることはあまり無いのじゃないかと思います。スピーカーから音が出なくても、その原因は音源や配線であることが多いと思います。
カーステレオの修理方法で多少やり方が違うことはあっても、おおむねみな同じことをすると思います。
スピーカーから音が出ないのに、原因がスピーカーではないことと、頭痛なのに首から下に原因があることはよく似ています。 そして、先ほどの頭痛に当てはめるならば、スピーカーは頭部であり、コンポ機器は胴体(内臓)になります。上記の作業例ではあまり患部(頭部=スピーカー)を診てはいません。
さて、今度は車の持ち主になって考えてみてください。あなたは「スピーカーから音が出ないのに、なぜスピーカー以外の場所を触ってばかりいるんだ?」と尋ねますか?
尋ねない方がほとんどだろうと思います。
尋ねない理由は、「スピーカー以外の場所に原因があることが多い」ことを知っているから、ではないかと思います。
東洋医学的な診方は?
やわらぎ治療室ですることも同じです。
東洋医学の考え方では、カーステレオで故障が起きやすく、重要な働きをするコンポ、配線などの部分は、首から下にあります。胴、上肢、下肢に有り、頭部にはありません。したがって、頭痛でも首から下に鍼を刺すことが多くなり、必要無いために、頭部に刺さないまま治ってしまうこともよくあります。
純粋に頭部に原因があるのは、頭をぶつけたりした場合くらいですね。そしてそれはほぼやわらぎ治療室の適応外です。
これは、頭痛以外の症状でも同じです。
それでも納得できない方へ
ここまで読んでも、「患部以外のツボで治るんなら、患部に刺せば、もっと効くはず」と思う方もいるかもしれませんね。しかし、その単純な方法で治るなら、簡単ですから体調不良で悩む人はみなさんとっくに治っていると思いますし、患者さんご本人でもできそうですね。そうならないのは、やはりその発想が間違っているからだと思います。
ツボで最も有名なものに「足の三里」があります。このツボは腹部の調整によく使われる特効穴です。しかしながら、このツボは腹にはありません。膝の下にあります。これ以外にも患部以外にある特効穴はいくらでもあります。患部以外の場所を使って患部を治療するのはごく普通なことなのです。
納得しにくいでしょうか?しかし、東洋医学はずっとこの考え方で治療を続けており、とても長い歴史があります。やわらぎ治療室が思いつきでしていることではありません。興味のある方は、他の治療院のサイトを「経絡治療とは」などのキーワードで検索してみてください。このページと同じことを違った言葉で表現していると思います。