鍼をたくさん刺す治療院って?
「○○○治療院はハリネズミみたいにたくさん刺してすごいんだよ」 という話を何度か聞いたことがあります。たいてい誇らしげに話しておられます。これを読んで、皆さんはどう思われるでしょうか? 「そんなすごい治療院があるんだ行ってみたい」と思うでしょうか?それとも「痛そうで嫌だ」と思うでしょうか?
たくさん鍼を刺すことに対する誤解
私はこの話を聞いて思い出すエピソードがあります。それは、時々聞かされる話で「A病院は薬を1種類しかくれないんだよ。だめだよねえ、ヤブなんでB病院に替えたら、5種類もくれたよ。B病院に替えて良かったよ」というようなものです。 これは特に歳を召した方からよく聞きます。 これは言うまでもなく間違った判断です。薬の多さで医師の良し悪しは測れません。 薬の目的は体調を回復させることにあります。1種類でもとても効果が高い薬なのかもしれません。5種類でもなんの効果も無い薬しかもらっていないかもしれません。 またその逆もありえます。良し悪しを測るのはその薬を飲んだ後に"どのような効果があったか?"で判断しなければいけません。 もうひとつ付け加えるならば、副作用が少ないほど良い、ということです。 高熱で苦しんでいたけれど、薬のおかげであっという間に平熱になった。そして次の日に亡くなった。では、うれしくありませんね。
さて、冒頭のハリネズミのようにしてもらえる治療院はどうなのでしょうか? これまでその治療を受けた後の効果については聞いたことがありません。「たくさん刺してもらえるから良い」と考えるのはあまり賢いこととは思えません。あくまでもそのことによる結果が重要です。薬の量が多いのを喜ぶのと鍼の本数が多いのを喜ぶのは同じようなことに感じます。もちろんそのハリネズミのようにたくさん鍼を刺された後に大きな効果があればその治療を、私は否定しません。逆に効果があまりなかったら、痛いことが好きな方を除いてあまり良い治療ではないと思います。
やわらぎ治療室の鍼の本数は?
さてやわらぎ治療室ではどうかというと、そのようにハリネズミのような状態にすることはありません。それで安心する方もいます。
やわらぎ治療室ではまず、最も効果がある2,3箇所に刺激をします。
4,5,6番目にも刺しておくべきだ。
と思う方もいるようですが、やわらぎ治療室ではそうしません。なぜかというと、その4,5,6番目に効きそうなツボは2,3箇所に刺激を与えたおかげで消えてしまっていることが少なくないからです。
つまり仮に6本いっぺんに刺しても3本は意味が無いものになっていたりします。言い方を変えると、1~6番目のツボは1~3番目のツボだけで代用できたりします。
適切にツボを選べば選ぶほどにこういうことが起こります。ケチで刺さないわけではありません(笑)
また、鍼を刺したままにしておくとその影響はその時間分だけ増加します。点滴みたいなものだと思ってください。
鍼灸にはいくつか流派があります。そのうち経絡治療と呼ばれる流派は少ない本数、弱い刺激で体質を根本から変えると言われています。
重要なツボを使えていれば”お試し”であちこち刺す必要が無くなります。
たくさん刺せば刺すほど健康になれる、と考えていたら、それは明らかな間違いです。ツボが出ているところに刺したときしか効果はありません。
最適な刺激を最適な場所に最適な時間与えることがとても良いことだと考えています。過剰な刺激を望む方はそのような治療院を探したほうが良いかもしれません。
自然治癒力にとって過剰はあまり良いことと考えていません。食べ物などもそうですね。どんなに体に良い物も食べ過ぎては不健康のもとになります。食べれば食べるほど健康になるわけではありません。どんな薬も効果があるからと言って必要量の10倍も100倍も飲んだらどうなるんでしょうか?有害ではないでしょうか?10倍、100倍効果が出るのでしょうか?
いかがでしょうか?
こうした考えに理解していただける方お待ちしております。