コーヒーは身体を冷やすの?温めるの?鍼灸師の立場から考察

資料もないのに、理論的な説明をつけようとするのは大きな間違いだよ。人は事実に合う論理的な説明を求めず、理論的な説明に合うように、事実のほうを知らず知らず曲げがちになる。
シャーロック・ホームズの言葉   

1.コーヒーは身体を冷やすと世間で言われていることに初めて気づく

ある時、患者さんから、「コーヒーは身体を冷やすので飲まないようにしています」と聞きました。 コーヒーは身体を温めると思っていたので私はびっくりして「えっ、???、コーヒーは身体を温めますよ」と言うと、その方は、「あ、そうなんですか、それは知りませんでした」と言って一応理解した様子でした。 しかし、その後、同じような話を2名の方から聞きました。「一体、どうなっているんだろう?私が勘違いしていたんだろうか?」と思い、ネットで検索をかけてみることに...

検索してみると、コーヒーと体温の関係を記述したものの90%くらいは「冷やす」となっています。世の中の多くの方は冷やすと思っているらしいことに初めて気付きました。ちょっと驚きです。しかしながら、私と同様にそのことに疑問を感じ、「温める」と記述している方も少ないながら確実にいます。ホッとしました。ラジオで医師が「コーヒーを飲むと身体が温まる」と言っていたという話も見つけました。コーヒーを常飲している人の体温を医学的な統計データとして調べたものがあれば良かったのですが、それは見つかりませんでした。

2.コーヒーと体温との関係を調べてみた

見つかったものとしては、

  1. 南国で取れるものであることが身体を冷やすと言う根拠になっていること
  2. コーヒーを飲むと血圧上昇するという医学データがあること
  3. コーヒーは血流改善に効果があるという医学者の研究データがあること
  4. 興奮作用があること(眠気覚ましなど)
  5. 登山家が冬山などで飲むと言われていること
がありました。

3.コーヒーと体温の関係について得られた情報を考察

 3.1 冷やす根拠に関する反論

まず、1ですが、コーヒーで有名なものと言えばキリマンジャロコーヒー、ブルーマウンテンコーヒーが思い浮かびます。 キリマンジャロコーヒーはタンザニアのキリマンジャロ山の麓の町、アルーシャやモシ近くの、標高1,500mから2,500m付近のプランテーションで栽培されており、 ブルーマウンテンコーヒーはジャマイカにある「ブルーマウンテン山脈」の標高800〜1200mの特定エリアで栽培されています
キリマンジャロ山のあるタンザニア連合共和国 ダルエスサラームは 緯度-6.82292、ブルーマウンテン山脈は緯度:-3.07そして比較のために調べた沖縄県那覇市は緯度26.1312です。 
これでキリマンジャロ、ブルーマウンテンの産地は赤道付近であることがわかります。 確かに南国で栽培されています。薬膳的に診ても暖かいところで摂れた食品は身体を冷やすと言われています。
が、よく見ていただきたいのは標高です。とても高い場所で栽培されています。そして意外なことにコーヒーの木は寒すぎても、暑すぎても栽培地としては適さないそうです。 キリマンジャロ山は確か雪も降るような山だったと記憶しています。ヘミングウェイ作の「キリマンジャロの雪」という小説、またグレゴリー・ペック主演で映画化された同名映画が有名ですね。つまりキリマンジャロ山は赤道付近でありながら雪が積もるような寒い場所で、いわゆる赤道付近として我々がイメージする酷暑の場所とは違うようです。
コーヒー栽培には寒暖の差が激しい場所が適しており、最適気温は、平均気温は20℃(最低気温15℃以上、最高気温30℃以下)だそうです。ちなみに沖縄の平均気温は23.1度で、茨城県の年平均気温13.3度です。こうしてみると、赤道付近にしてはかなり低い温度の場所が選ばれることがわかります。
つまり、南国であっても標高が高いために暑い場所ではありません。気候的にはもっと北の場所と同じような気候と考えられます。これはブルーマウンテン、キリマンジャロコーヒー以外でも同様です。 南国の気温が高い場所であれば、そこで取れたものは身体を冷やしやすいです。しかし、気温が低い場合は気温的には一般的な南国とは異なり、「南国の植物だから身体を冷やす」というのは論拠としては弱いと思います。また、気温が高い場所で育っても身体を温める植物はあります。例えば胡椒がそうです。原産地はインド南西マラバル地方。現在ではインド、インドネシア、マレーシア、ブラジルが主な産地で、コーヒーの産地とも近いですが、こちらは温めるものとして紹介されています。
身体を冷やす論拠はこれくらいでした。

 3.2 身体を温めると思える根拠

そして2から4については、血圧が上昇し、血流を改善し、興奮作用があって体温が下がる。ということはちょっと考えにくいと思いますがいかがでしょうか? 血圧が上がって体温が低い人、血流が良くて体温が低い人、興奮しながら低体温な人。どれもちょっと想像しにくいです。 何事かあって興奮して血圧が上がり、脈拍数が増え、血流量上昇した場合、「カッカしてきた」という表現を耳にします。それは、どう考えても熱が高まった状態を表現しているように感じます。
興奮して血圧が上がり、脈拍数が増え、血流量上昇した場合に「寒くてブルブル震えた」という表現を聞いたことは無いです。私の知らないだけでしょうか?
5についても外国の映画などで、雪山の夜の山小屋でコーヒーを飲むシーンを何度も見た記憶があります。寒い雪山で身体を冷やす飲み物を飲んでいるとしたらとても危険です。 自分自身の子供のころの思い出として、初めてコーヒーを飲んだ後、顔が赤くなったのを覚えています。同じような経験をした方はいないでしょうか?体温が低くなるのであれば普通は青くなると思います。

3.3 当治療室で診る患者さんの傾向

私がこれまで診た患者さんのうちコーヒーを多飲していた人の多くはほてりがあったり、平熱が高かったり、冷え性とは逆のイメージがあります。
どちらかというと男性が好んで多飲しており、男性の多くはほてり体質です。コーヒーを飲むようになって冷え症になった、という話はまだ聞いたことがありません。

4.まとめ

コーヒーは身体に悪い。身体を冷やすものは身体に悪い。といったイメージ先行でできたお話のような気がしています。 コーヒーについてウィキペディアを見ると元々医薬品として用いられ、また悪性腫瘍の項には、悪性腫瘍は低体温が悪影響を与えやすく、無糖コーヒーはお勧めの飲み物として記述されていました。これもコーヒーが身体を冷やすとするとつじつまが合わなくなります。
ちなみに身体は冷えすぎると良くないですが、温めすぎも良くありません。中間の状態が健康です。
ざっと調べてやはり私にはコーヒーは身体を温める。としか思えませんでした。私の知らない「コーヒーは身体を冷やす」というもっと強い根拠があれば教えていただければうれしいです。

5.その後

追記:上記文章を書いて数年経ち、改めてコーヒーと体温の関係について検索してみました。
なんかこのページと内容が似通っているものがちらほらあったり、この文章が影響したのかどうかわかりませんが、温める、と書いてあるものも当時と比べて増えてきました。
ただし、温めるけれど、それは短期であり、長期で見ると冷やすのだ、という記述も見ることができます。
それらをいくつか読んでみましたが、やはりなぜそうなのか?実際にそういう人をたくさん見たのか?といった観点では特に記述は無く、
私自身の経験、私が日ごろ診る患者さんの体調からも長期では冷やす、という印象がなく、やはり依然としてコーヒーは長期でも短期でも身体を温めるものではないかと思っています。

さらに最近コーヒーと体温の関係を医学的に調査し、体温を高める。という調査結果が海外で発表されているのを見つけました。逆に冷やす、というのは無いようなのでやはり温めるということで正しいようです。

関連ページ:冷え性・ほてり治療薬膳・食養生について食事を考え直してみましょう(薬膳=東洋医学的栄養学)
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